アニメ人気復興の力に

読売新聞2008年の豪雨災害から間もなく3年となり、再興への節目を迎えた金沢市湯涌温泉で23日から、放映中のアニメの人気にあやかり、作品に登場する祭りの再現イベントが始まる。温泉街の関係者は、新たな客層の開拓に期待を寄せる一方で、アニメ人気に頼った集客は「一過性のブームで終わるのではないか」と心配する声も出ている。
08年7月28日に発生した豪雨災害では、川からあふれ出た濁流が温泉街を襲った。水かさは大人の胸の高さまで達し、9軒ある旅館のうち6軒で、機関室が水没したり、露天風呂が土砂に埋もれたりする被害が出た。総湯も床上浸水し、ボイラーが故障。復旧まで半月を要した。
同温泉観光協会では、翌09年から毎年夏に復興イベントを実施。今年は「復興と銘打つ最後の年」と位置づけており、各種イベントを開催して集客を図りたい考えだ。
弾みになりそうなのが、今年4月に県内や関東・中京圏で放映が始まったアニメ「花咲くいろは」の影響だ。劇中の舞台である「湯乃鷺(さぎ)温泉」のモデルは湯涌温泉とされ、インターネットでは、作品に登場する場面を巡る行為が「聖地巡礼」と称され、ファンの間で人気を博している。
アニメの製作委員会から委託を受けて協会が販売するポスター(5枚2000円)とクリアファイル(同)は、すでに計2600部を販売。購入に訪れるファンの多くは、県外に住む20歳代後半から30歳代の男性という「今までにない客層」(同協会)で、温泉街の入り口にある旅館の標識や、施設に張られたアニメポスターの前で記念撮影する姿が、連日のように見られるようになった。
そこで協会では、復興イベントの一環として、作品中に登場する「ぼんぼり祭り」の再現を企画。総湯裏にある神社境内に、10月9日の本祭まで毎夜ぼんぼりをともし、参拝者が願い事を記した「のぞみ札」を下に掛けるという。点灯式が今月23日に予定されており、すでにツイッターでは「行くしかない!」「盛り上がりそう」などと注目を集めている。
こうしたファンの動きが予想できないことから、同協会はホームページ上で、想定を超える来場があった場合に「対応が行き届かない恐れ」があると説明、通行制限や立ち入り禁止場所の設定を予告する異例の対応を見せている。
同協会は「湯涌は各旅館の規模が小さく、大挙して来ても対応できない」として、混乱を避けるために積極的な広報を避け、ネットの口コミ効果で限定的な集客を狙っている。大田忠吉事務局長(65)は「アニメ効果による一時的なピークで終わらせたくない。落ち着いた時に来てもらって、湯涌の本当の良さを知ってもらい、将来のリピーターになってほしい」と話している。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/ishikawa/news/20110722-OYT8T01110.htm