本日の日本経済新聞夕刊より「お出かけナビ アニメの舞台 町ごと楽しむ 商工会や鉄道会社も仕掛けに一役」

テレビや映画で放映されるアニメの舞台になっている地域で自治体などが開催するイベントが増えている。これまでもアニメのゆかりの地を訪ねるファンは多く居たが、最近では町ぐるみでアニメの世界観を楽しめる仕掛けをする地域もあり、楽しい旅が出来そうだ。

「私たちの街、大洗へようこそ!」鹿島臨海鉄道大洗鹿島線大洗駅茨城県大洗町)に着くと、約20人の女子高生のキャラクターが描かれた看板が出迎える。駅構内にはアニメのシーンを切り取って作ったパネルが飾られ、キャラクターが側面に描かれたラッピング列車も数時間に1階停車する。

等身大パネルやスタンプラリー
大洗町は、若者を中心に人気のアニメ「ガールズ&パンツァー」、通称「ガルパン」の舞台となった場所だ。ガルパンは現実には存在しない高校「県立大洗女子学園」に通う女子高生達が、戦車を使った架空の武道「戦車道」に打ち込み、優勝を目指して努力する日々を描いたアニメだ。
駅前やアウトレットモール、水族館など町に実在する多様な場所がアニメに登場する。大洗町は人口1万8000人程度の小さな町だが、アニメの世界を追体験しようと、昨年の放映開始後、来る人が過ぎた。駅にあるインフォメーションセンターによると「多い日には700人以上が訪れる」という。
9月上旬に埼玉県三郷市から友人と3人出来た飲食店勤務の男性(28)は「駅を降りるとアニメで見ていた景色が広がって驚いた。アニメのシーンを思い出しながら街を歩くのが楽しい」と笑顔を見せた。
大洗商工会は「ガルパン街なかかくれんぼ」と称して、町内のあらゆる場所にキャラクターの等身大パネルを54体設置した。町に訪れた人たちがパネルを探しながら劇中に登場した店や場所などを回れるような仕掛けを作った。
パネル付近にあるスタンプを集めるスタンプラリーでは、ヒントをもとに参加賞をもらえる場所も探す。ラリーに挑戦した東京都西東京市の男子大学生(19)は「街並みを見ながらいろいろな場所を回れるのがいい」と話す。
町の商店も関連した商品やサービスを提供する。飲食店では工夫を凝らしたユニークなメニューもある。大洗駅から徒歩10分の所にある、寿司店「粟崎屋」では、アニメに登場する戦車のような形に盛りつけた「戦車寿司」をメニューに加えた。ネット上などでも話題を集めている。
まぐろやサーモンなど使うネタは約10種類。「多いときには1日で80人程度の注文がある」と、店主の荘司和幸さん。「アニメの話題でお客さんとの会話が増えた」と満足そうな様子だ。
長野県軽井沢町は7月20日に公開された宮崎駿監督のアニメ映画「風立ちぬ」の舞台だ。零式艦上戦闘機ゼロ戦)の設計者である堀越二郎の半生がテーマだが、堀辰雄の小説「風立ちぬ」の要素も取り込んだ。軽井沢町にある「堀辰雄文学記念館」では12月27日までの期間、「風立ちぬ」の企画展も催している。

背景深く知る企画展を開催
企画展では「風立ちぬ」に関連する本や資料、写真など公開。映画のヒロインのモデルにもなった堀辰雄の婚約者、矢野綾子が描いた油絵もあり、アニメの背景を知ることが出来る。
埼玉県秩父市は、人気テレビアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」の舞台だ。恋や友情など身近なテーマをファンタジー要素を交えて描いたことで幅広い層から人気だ。8月31日にアニメの映画が公開された。
公開に伴って市内にある多目的スペース「本町知々夫ブランド館」では、市が作ったポスターや、アニメの原画と実際の町の風景写真、作中に登場するTシャツなどを9月23日まで展示する。
西武鉄道秩父駅の周辺の部隊となった場所を訪れるスタンプラリー形式のイベントを9月末まで開催している。スマートフォンなどでQRコードを読み取りながら進む。
8月1日から始まったイベントの参加者数はすでに3万人を超えた。秩父市を何度も訪れているという男子大学生(24)は「アニメの世界に自分も入ったような気分になれて楽しい」と笑顔で話した。