消えるメード喫茶 県内唯一の店舗 月末に閉店

4月21日北國新聞朝刊より
金沢市竪町商店街にある石川県内唯一のメード喫茶「Camelot(キャメロット) 」が、4月末で閉店すると耳にした。2006(平成18)年、同商店街に石川初の店舗(別の店で既に閉店)が誕生してからわずか6年。県内からオタク文化の象徴が消える前に一度、「ご主人さま」と呼ばれるのも悪くないと思い、店に向かった。
「お帰りなさいませ。ご主人さま」。ふわふわのフリルのついたメード服に身を包んだ店員の「緋夜(ひよ)」さん(19)がコーヒーを差し出してくれた。サービスのメニューにある「おまじない」を頼むと、「おいしくなあれ」とかわいらしく祈ってくれる。あらためて口にしたコーヒーは、なんだか味わい深くなったような気がする。
少し冷静になり、店内を見渡すと、20ある席に「ご主人さま」はわずか3人だけ。常連客でこれまで80回通ったと豪語する公務員男性(23)は「店がなくなると楽しみがなくなってしまう」と肩を落とした。
店を運営する「AVALON(アバロン)」(小松市)の代表西良弘さんに聞くと、昨年7月の開店から客足は伸びず、1日6人ほどだという。このため、平日雇っているメードも2人だけで、それでも人件費が負担になっている。
オタク文化推進委員会というグループの代表も務める西さんは「石川の保守的でおとなしい県民性が関係しているんですかねえ」と独自に分析する。
ただ、石川を舞台にしたアニメ「花咲くいろは」効果で、金沢の湯涌温泉のと鉄道には県内外から多くのアニメファンが訪れていることから、県民性とオタク文化が定着しないこととは、あまり関係はないようである。
「一つの店が長続きしないのは残念」と話すのは竪町商店街振興組合の山岸淑子理事長である。
竪町商店街は近年、家賃の見直しや、香林坊など周辺で相次ぐ人気店の出店効果で、空き店舗の解消が進み、客足が戻っている。山岸理事長は「若者のまちに空き店舗があるのは好ましい状態ではない」と言う。
メード喫茶の店じまいを悲しんでいるのは、どうやらオタクだけではなかったようだ。