本日の北國新聞朝刊より記事2本

北陸新幹線 和の超特急 JR東・西日本車両デザイン発表 象嵌、漆、金箔 工芸の色調採用
JR東日本JR西日本は4日、2014年度末の北陸新幹線金沢開業に向け、初めて共同開発する新型車両(E7系W7系)のデザインを発表した。車体には沿線に広がる青空の空色と、伝統工芸の象嵌(ぞうがん)をイメージした銅色を配し、社内には漆器や金箔を思わせる色調を採用。「和」を全面に打ち出した。内装材は難燃性を考慮し、本物の伝統工芸品の活用は見送られた。
金沢方面の先頭車両には東北新幹線に続いてグリーン車より上級の「グランクラス」を用意し、車両の振動を最大限に抑える最新技術を取り入れる。全トイレに温水洗浄機能付き便座を設置し、電源コンセントやバリアフリー設備、防犯カメラなども充実する。
車体の先頭部はスピード感あふれる流線型で、車体色は気品あふれる象牙色とした。社内はグランクラス(18席)の壁面を重厚な漆色を基調とし、グリーン車(63席)の扉は朱漆。座席は金色で縁取りする。普通車(853席)の壁面は土壁色で、背もたれは格子模様で「和の美」を満載した。
ベースとした長野新幹線「あさま」のE2系より4両多い12両編成となり、4両分のモーターが増えることで急な坂道でも速度を維持。世界最新技術でブレーキ距離を約300メートル短縮させ、安全対策にも気を配った。
JR東は17編成、JR西が10編成を複数メーカーで製造。13年秋から長野新幹線に投入し、金沢−東京は全て新型車両が走る。営業最高速度は260キロで、金沢−東京を約2時間半で結ぶ。


谷本知事 県のイメージに合致
車両デザインの決定で、2年半後の金沢開業への期待感がさらに膨らむ。「和の未来」というコンセプトは加賀百万石の重厚な伝統文化を有する石川県のイメージに合致する。今後も首都圏への戦略的なPRを展開したい。

山野金沢市長 首都圏の誘客に弾み
昨年1月に市がJR西日本に提案した「豊かな時間を楽しめる空間デザイン」というコンセプトと合致し、北陸への旅の期待感が表現されている。金沢開業への気運がさらに高まり、首都圏の誘客活動に弾みがつく。


北陸新幹線新型車両 伝統工芸品活用見送り 石川で本物に触れて
北陸新幹線の新型車両デザインが発表された4日、石川県内の伝統工芸品の活用をJR西日本に提案してきた県や金沢市の担当者からは、「本物」が採用されなかったことを残念がる声が上がった。ただ、これまでの新幹線にない洗練された和の雰囲気には納得の様子で、担当者は「この車両でイメージを膨らませ、石川で本物に触れてほしい」と誘客に本腰を入れている。
「北陸の伝統工芸、伝統的な様式美を生かし、最先端の技術を融合した」。4日に東京・代々木のJR東日本本社で記者会見した冨田哲朗社長新型車両に胸を張った。記者に「漆は輪島塗、金は金沢の金箔、銅は高岡銅器を意識したのか」と問われると「ご指摘の通り」と当を得た表情。「工芸品の使い方はこれから細部を詰めていく」と語った。
ただし、同時刻にJR西日本金沢支社で三浦勝義支社長と並んで記者会見した則直久車両設計室長は「車両の火災対策基準が有り、(北陸の伝統工芸品を)具体的に直接使うことは考えにくい」と本物の活用は困難との見解を示した。
県は今年1月、新型車両を見据えた伝統的工芸品活用支援プロジェクトチームを設置し、6月末にJR西日本に活用法を提案。金沢市も昨年1月に北陸新幹線金沢クラフト活用研究会が具体案を提出していた。
金沢駅舎の内装は加賀友禅九谷焼、輪島塗などの伝統工芸品が取り入れられる方向となったことも有り、谷本正憲県知事は4日、新型車両のデザインを評価しながらも「残念ながら本物の活用は見送られた」とコメント。山野義之市長も「金沢駅舎や市内各所で本物をご覧いただける」との言い回しで、落胆の色をにじませた。
車両デザインの監修は、イタリア人以外で唯一フェラーるをデザインした奥山清行氏。デザインコンセプトは「大人の琴線に触れる『洗練さ』と心と体の『ゆとり・開放感』」という。ビジネス客中心の東海道新幹線とは異なったコンセプトを求めてきた県や市の意向は反映された。
「他の新幹線にない美意識が漂うデザインに間違いない」と市担当者。1編成で934人を運ぶ新型車両への期待感は薄れていない。