1月12日北國新聞朝刊より「街を歩くと アニメ『聖地』湯涌の旅館 『花いろ』に憧れ仲居男子 23歳・新鞍さん奮闘 巡礼ファンに人気」

金沢市湯涌温泉がモデルとなったアニメ「花咲くいろは」。主人公の女子高生の仲居に憧れ、湯涌の旅館で仲居として働く人物がいると耳にした。会いに行ってびっくり。現れたのは23歳の男性だった。アニメファンから一目置かれ、お年寄り客には孫のようにかわいがられている「仲居男子」の仕事ぶりに迫った。
 アニメに登場する旅館のモデルとされる「秀峰閣」で働くのは 、新鞍光太郎(にいくらこうたろう)さん。1年前から住み込みで働いている。「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と客の出迎えや見送りは慣れたもので 、配膳、客室の掃除もばっちりだ。
金沢育ちの新鞍さんは高校中退後、職を転々とした。通信工事のほか、片町のバーで働いていたこともあったが、長続きしなかった。アニメにのめり込むようになったのはそのころだ。「主人公の松前緒花は、何に対しても一生懸命で決して信念を曲げないんです」 と「花咲くいろは」の虜になった。
「大好きなアニメの舞台で働きたい。生き方を変えられるかもしれない」と一念発起。 ただ仲居は一般に女性の仕事であり、新鞍さんは「男の自分には無理」と考え、板前の面接を受けた。女将の山下眞咲美さん(64)は「あまりにも熱心だったんで、 ちょうど仲居も足りていなかったし、仲居さんとして雇いました。女性ばかりなんで、力仕事や機械にも詳しく大助かりやね」とべた褒めだ。
花咲くいろは」ファンにとって「聖地」で働く新鞍さんは羨望の的 。ツイッターを通じて存在が知られ、新鞍さん目当てに全国から若者が来るようになった 。直接、予約を申し込んだり、一緒に記念撮影を頼む客も多い。孫ほど年の離れたおばあちゃん世代にも「光ちゃん光ちゃん」と呼ばれアイドル的存在だ。
仲居業は毎朝5時に起きて、宴会があれば夜11時ごろまで続くきつい仕事だが、ほとんど休んだことがない。普段は脇目も振らず仲居をこなす新鞍さんだが、昨年10月の「 湯涌ぼんぼり祭り」の時はちょっと違った。「花咲くいろは」に登場する祭りを再現するイベントだった。「憧れの声優を接客できて幸せでした」と表情を崩す。当日、満室の旅 館は大忙しで、肝心の祭りは見られなかったのかと思いきや「実は行きました…」と告白 。女将さんも「しょうがないねえ」と苦笑する。
部屋を見せてもらうと予想を裏切らず、ポスターやフィギュアなどアニメグッズでいっぱいだった。「仲居の仕事は自分が求められているって感じがありますね」と打ち込める ものをようやく見つけた新鞍さん。「花咲くいろは」効果は、湯涌温泉に人を呼び込んだだけではなかったようだ。


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