昨日の日本経済新聞北陸版朝刊より「自治体トップに聞く アニメで地域おこし スマホ配信、集客に寄与」

世界遺産五箇山合掌造り集落で知られる富山県南砺市がアニメによる地域おこしに力を入れている。市内に本社を置く製作会社と連携し、訪れた人だけが楽しめる作品を2013年春からスマートフォンスマホ)に配信している。観光客らを呼び込む切り札となるかどうか、田中幹夫市長に聞いた。
――アニメで地域活性化というのはユニークな取り組みです。
南砺市にはクリエーターを引き寄せる土地の魅力があるようだ。戦中から戦後にかけて移り住んだ木版画棟方志功はここで作風が変わったと言われている。作風の変化について、(民芸運動の)柳宗悦は『土徳』があるからと言った」
「演出家の鈴木忠志さんは40年間、当市を中心に活動している。本社があるアニメ製作会社ピーエーワークスは東京からアニメーターを呼び寄せている。市内にある井波の木彫りや城端の絹織物が300年以上続いてきたのもこうした風土と無関係では無いだろう。」
――具体的な取り組みに至る経緯は。
「同社が08年に制作した南砺市がモデルのテレビアニメが終了して4〜5年たつのに、ファンがここを訪れることに驚いた。アニメは人を集められるコンテンツだと思い、市内を舞台にした本物の恋愛アニメの制作を依頼した」
――視聴できるのはスマホのみです。
「当初はDVDにする考えだった。しかし今はスマホの時代。また最初からすべてを見せるのではなく、じわり見せていきたいというアニメーターからの提案で、3つのストーリーを前編と後編に分け、5分ずつ6本のアプリにした。スマホの機能を使うと、全地球測位システムGPS)で、来ないと見られないアニメにした」
――アニメの集客力をどう見ますか。
ピーエーワークスが制作した、金沢市湯涌温泉がモデルのアニメのイベントで1万人が集まった。全員が熱心なエバンジェリスト(伝道師)で国内外に発信している。砺波市のチューリップフェアに何十万に集まるのとは次元が違う」
――地元への経済波及効果はありますか。
「いのくち椿館など作品に登場した観光施設は目に見えて来客者が増えている。南砺市はアニメの版権の一部を所有している。これを利用し、地元の商工関係者が新商品に活用しようという動きが広がっている。商店街の人たちが統一した買い物袋で盛り上げていくという動きは出ている」