「ネット動画のコメント分析 アニメで観光誘客へ 金沢学院大・越田准教授 花いろなど『生の声』収集」

金沢学院大美術文化学部の越田久文准教授は、インターネット動画サイト「ニコニコ動画」に書き込まれたコメントを分析し、観光誘客に生かす研究を始める。金沢市湯涌温泉をモデルにした「花咲くいろは」などアニメが対象で、「聖地巡礼」として作品の舞台を訪れたファンの投稿動画に対する視聴者コメントを解析し、どのようなアニメ作品が旅行者を誘因するかを調べる。研究結果は自治体や観光組合などに提供し、アニメを活用した町おこしを後押しする。
国立情報学研究所が昨年から、ニコニコ動画のデータを研究者向けに公開していることから、活用することにした。
サイトにはアニメ映像のほか、ファンが作品の舞台を旅行した際に撮影した映像が投稿されており、それに対する感想コメントも活発に書き込まれる。100万以上のコメントを集める通称「ミリオン動画」もあり、通常のアンケート調査とは比較できないほどの「生の声」を集められる利点がある。
研究は3年計画で、「花咲くいろは」をはじめ、南砺市が舞台の「トゥルーティアーズ」、岐阜県高山市の「氷菓」、茨城県大洗町の「ガールズ&パンツァー」など観光効果をもたらした成功事例のほか、ヒットしなかった失敗事例の作品も調べる。肯定的、または否定的なコメントの割合を調べるなどして、ネット上の世論を分析する。
ネットでは、猫を「ぬこ」と意図的に誤変換して使うなど、特有の俗語(スラング)が多数使われることから、初年度は言語解析プログラムにスラングを登録することから始めるという。研究は3人で行い、経営情報学部の酒井亨准教授がアニメの舞台地での現地調査を担当、美術文化学部の吉田一誠講師は、アニメの映像表現と、視聴者心理の関係性を考察する。
アニメは、放送終了から年月がたっても舞台地に訪れるファンが多く、一過性のブームに終わらないことから、観光関係者の関心は高い。研究は文部科学省の科学研究費助成事業にも採択されており、越田准教授は「まだ十分に行われていないアニメツーリズムの学術研究を進め、日本のクールジャパン戦略に貢献したい」と話した。