1月8日日本経済新聞北陸経済欄より「次代担う 北陸の革新者 ピーエーワークス社長 堀川憲司(47)」

今春初めて原作権を持つ劇場版アニメを公開する、富山県南砺市に本社を置く製作会社の経営者だ。地方に本拠を置く企業が、アニメ制作の全体を管理する元請けまでできるのは珍しい。会社の発展にはまず作品の品質維持、向上が不可欠と考え、人材の育成に力を注ぐ、業界では異色のトップだ。


−−地方にあるアニメ製作会社は珍しいですね。
「東京でアニメ制作を管理する仕事をしていたが、家族との約束で故郷の南砺市に戻ることにした。北陸に人を雇える規模のアニメ会社がなかったので、自分で作ってみようとなった」
「(動きの基本となる)原画はアナログなので、今でも紙でやりとりをしている。デジタル化を検討した時期もあったが作画技能の上達には結びつけられなかった。南砺市で本格的に作画を始めたのは2008年に放映したテレビアニメ『true tears』からだ。東京から離れた南砺では、まとまった仕事量をこなせるだけの人数がそろわないと、原画の流通面でコストがかかる。人材が育ち、自社での異性策を本格化させた」
−−人材育成に力を入れるようなったのはなぜですか。
「創業当時は『新世紀エヴァンゲリオン』などがヒットし、アニメへの注目が集まっていたころ。業界全体の作品数が増える一方で、品質が安定しなくなった。求められる生産量に対して人材が足りなさすぎた。アニメ制作はまず作品の品質を維持することが先決。人を育てることが大切だと思い至った」
−−なぜ担い手が増えないのですか。
「アニメーターの収入は出来高払いなので、たくさん絵を描かないと生活できない。体力的には30代がピーク。40代になると(量産できなくなり)生活が苦しくなる。今の若い世代は将来の不安からやめていく」
−−これを打開する具体策をどう考えますか。
「若手を育成する立場を担えるクリエーターを育てたい。都市部は人材の流動性が高く、作品ごとに制作スタッフの顔ぶれが変わるようなところがある。北陸は好きな作品をはしごできるほど製作会社がなく、企業との依存関係が強くなる。企業は長い目で自社のクリエーターを養成することができる」
「社内に優秀なクリエーターを抱えることができれば、会社が手掛ける作品の品質も安定する。良い作品によって収益を向上できれば、出来高以上の報酬を付加価値として、若手の育成を担うクリエーターに投下できる。今春公開する劇場版の『花咲くいろは』は初めて原作権を持つ劇場版作品となる。ヒットすれば原作印税などが還元され、経営的にも大きな意味がある。(製作委員会から受け取る)制作費だけでは収支は厳しい。それ以外の収益源を拡大する必要がある」


ほりかわ・けんじ 1965年、愛知県江南市生まれ。90年から東京でアニメ制作に携わる。2000年に独立し、越中動画本舗(現P.A.WORKS)を設立。人気アニメの下請けを手掛ける一方、オリジナル作品として「true tears」「花咲くいろは」などを制作。多くのファンがアニメの舞台になった富山、石川両県を訪れ、話題になった。


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